アロス・デ・パト(ポルトガル風鴨肉の炊き込みご飯)

アロス・デ・パト(ポルトガル風鴨肉の炊き込みご飯)

今回ご紹介するのは、スペイン料理とよく似ていますが、実は国境を越えた隣国ポルトガルの魂とも言える一品、「アロス・デ・パト」です。直訳すると「鴨のライス」ですが、その調理法はスペインのパエリアとは大きく異なります。まず鴨肉とチョリソーを煮込んで濃厚なスープを取り、その旨味が染み込んだスープでご飯を炊き上げます。しっとりとしたご飯、ほぐした鴨肉、そしてチョリソーの塩気が三位一体となり、非常にリッチで深い味わいを生み出します。少し手間はかかりますが、その価値は十分にある、おもてなしにも最適な料理です。.

調理時間: PT90M
難易度: 中級
4人分
地域: ポルトガル

歴史的・文化的背景

この料理の起源は、ポルトガル北部の都市、ブラガにあると言われています。19世紀から20世紀にかけて、ポルトガルの家庭料理として確立され、今では国中で愛される国民食となりました。パエリアが「乾いた」食感を特徴とするのに対し、アロス・デ・パトはよりしっとりとした「マランドロ(ウェットな)」スタイル、またはオーブンで仕上げる「セコ(ドライな)」スタイルがあります。

特筆すべきは、チョリソー(ポルトガル語ではchouriço)の使用です。これはイベリア半島共通の食文化ですが、この料理における鴨とチョリソーの組み合わせは、ポルトガル料理の独創性を象徴しています。元々は狩猟で得た鴨を余すことなく使い切るための知恵から生まれた料理であり、その濃厚な味わいは、ポルトガルの赤ワインと素晴らしいマリアージュを見せます。

材料(4人分

  • 【肉類】
  • 鴨: 半羽(もも肉、胸肉、骨に分ける)
  • 鶏もも肉: 2本(スープの旨味を補強するため)
  • チョリソー(ポルトガル風 chouriçoが理想): 1本
  • 【米】
  • ボンバ米またはカルナローリ米: 320g
  • 【スープ用野菜】
  • 人参: 1本
  • ポロネギ: 1本
  • セロリ: 1本
  • 【ソフリート用】
  • 玉ねぎ: 1個(みじん切り)
  • ニンニク: 3片(みじん切り)
  • ピーマン: 1個(みじん切り)
  • 完熟トマト: 1個(すりおろすか、細かく刻む)
  • 【その他】
  • 赤ワイン: 100ml
  • ローズマリー: 小さじ1
  • エクストラバージンオリーブオイル
  • 塩、黒胡椒

必要な調理器具

  • 大鍋(スープ用)
  • パエリアパンまたはオーブン対応のキャセロール鍋
  • 包丁とまな板
  • ザル

調理手順

1

スープ作りと肉の下準備: 大鍋に水1.5L、鴨の骨、鶏もも肉、丸ごとのチョリソー、スープ用野菜(人参、ポロネギ、セロリ)を入れ、火にかける。沸騰したら鴨のもも肉を加え、アクを取りながら弱火で約1時間煮込む。

2

肉を取り出し、スープを濾す: 1時間後、鍋から鴨もも肉とチョリソーを取り出す。スープはザルで濾して、旨味の詰まったクリアなスープ(約1L)を確保する。鶏肉と野菜はスープの役目を終えたので取り除く。

3

肉を準備する: 鴨もも肉の骨を外し、手で粗くほぐす。チョリソーは5mm厚の輪切りにする。鴨の胸肉は皮目に格子状の切り込みを入れ、塩胡椒を振っておく。

4

鴨胸肉を焼く: パエリアパンを熱し、鴨胸肉の皮目を下にして中火で焼く。出てきた脂をスプーンですくいながら、皮がカリカリになるまでじっくり焼く(約5〜7分)。裏返して30秒ほど焼いたら取り出し、アルミホイルに包んで休ませておく。

5

ソフリートと米を炒める: パエリアパンに残った鴨の脂(多ければ少し減らす)で、みじん切りにした玉ねぎ、ニンニク、ピーマンを10分ほど弱火で炒める。トマトを加えて5分炒め、ほぐした鴨もも肉とチョリソーを戻し入れる。

6

炊き上げ: 赤ワインを加えてアルコールを飛ばし、米とローズマリーを加えて米が透明になるまで2分ほど炒める。温めておいたスープ(米の約3倍量、約960ml)を注ぎ、塩で味を調える。全体を一度だけ混ぜる。

7

火加減と仕上げ: 最初の10分は強火で、その後弱火にして8分炊く。火を止め、休ませておいた鴨胸肉を薄切りにしてご飯の上に美しく並べる。清潔な布巾やアルミホイルをかぶせ、5分間蒸らして完成。

盛り付けとマリアージュ

炊き上がったら、テーブルの中央に鍋ごと置いて、皆で取り分けて食べるのが最高です。

この料理には、力強いポルトガルの赤ワイン(ドウロ産やアレンテージョ産など)が非常によく合います。

お好みで、オレンジのスライスを添えると、鴨肉とのクラシックな組み合わせが楽しめ、見た目も華やかになります。

地域によるバリエーション

オーブン仕上げ: ポルトガルのレストランでは、炊き上げた後、表面にチョリソーのスライスを並べてオーブンに入れ、焼き色をつけるスタイルが一般的です。これにより、おこげの香ばしさが加わります。

マランドロ(Malandro)スタイル: スープの量を少し多めにして、リゾットのように少し汁気を残して仕上げる「ウェット」なバージョンもあります。

肉の種類: 鴨の代わりに、ウサギや鶏肉だけで作ることもありますが、やはり鴨を使ったものが最も伝統的で豪華です。

実用的なアドバイス

スープが命: この料理の味の決め手はスープです。時間をかけて丁寧に旨味を引き出してください。

鴨の脂: 鴨胸肉を焼いたときに出る脂は、旨味の塊です。捨てずにソフリートに使うことで、料理に格段の深みが出ます。

米を混ぜすぎない: スープを注いだ後は、パエリアと同様に、米を混ぜすぎないのが重要です。混ぜすぎると粘りが出て、食感が損なわれます。

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