豚スペアリブのパエリアの作り方|サフラン香る本格スペイン料理レシピ

パエリアは、スペイン・バレンシア地方発祥の米料理です。本来は野外で農夫たちが作る直火料理でしたが、現在ではスペイン全土の家庭や飲食店で親しまれています。 本レシピは、豚スペアリブを使った内陸部のバリエーション(パエリア・デ・カルネ)を基にしています。骨付き肉の脂と出汁が米に深くしみ込み、ローズマリーとパプリカの香りが特徴です。 日本の短粒米(ななつぼし、コシヒカリなど)はデンプンが多いため、パエリアにすると糊化しやすくなります。そこで本レシピでは、米を油で炒めて表面をコーティングする技法を用います。これにより、米がデンプンを過剰に放出せず、芯はしっとり、表面はパラリとした食感に仕上がります。.
歴史的・文化的背景
パエリアのルーツは、バレンシアの田園地帯で農夫たちが野良仕事の合間に、その場で手に入る材料――鶏、ウサギ、カタツムリ、旬の野菜――を米とともに直火で炊き上げた野外料理にあります。「パエリア」という名前は、ラテン語の「パテラ(平たい皿)」に由来し、のちに専用の浅く広い鍋そのものを指す言葉になりました。
スペイン全土に広がるなかで、沿岸部では魚介中心の「パエリア・デ・マリスコ」が、内陸部では豚やウサギ、時には鴨を使った「パエリア・デ・カルネ」が発展しました。豚スペアリブのパエリアは、カスティーリャやアラゴンといった内陸地方の家庭でごく普通に食べられてきたバリエーションです。
骨付き肉から出るゼラチン質と脂が米にしみ込み、噛むたびに旨みが広がるのが特徴です。見た目の華やかさよりも、素材の力強さを味わう百姓の料理として、飽きのこない味わいがあります。
日本の短粒米(ななつぼし、コシヒカリなど)は、スペインのボンバ米に比べてデンプンが多いため、たっぷりのブイヨンを吸っても崩れやすくなります。そこで本レシピでは、米を油で炒めて表面をコーティングする工程を取り入れています。これによって、パエリアらしい一粒立ちの食感が実現できます。
材料(4人分)
- 【ソフリット】
- エクストラバージンオリーブオイル 大さじ4
- ニンニク(みじん切り) 4片
- 玉ねぎ(すりおろし、またはみじん切り) 小1個
- ピーマン(小、みじん切り) 1個
- 完熟トマト(すりおろし、皮なし) 2個(またはトマトピューレ200ml)
- パプリカ(甘口) 大さじ1
- ローズマリー(生の葉、または乾燥) 小枝1本分
- 塩 適量
- 【チキンブイヨン】
- 水 1リットル
- 鶏ガラ 500g(または骨つき鶏もも肉 400g)
- ポロねぎ(白い部分) 1本
- 人参 1本
- ローリエ 1枚
- 黒胡椒(粒) 10粒
- 塩 適量
- 【パエリア本体】
- 米(日本の短粒米、ななつぼしまたはコシヒカリなど) 250g
- 豚スペアリブ(3~4cm幅に切ったもの) 400g
- 上記のソフリット 全量
- 上記のチキンブイヨン(熱いもの) 600ml
- サフラン(糸状のもの) 0.2g
- 塩 適量
- エクストラバージンオリーブオイル 適量
必要な調理器具
- パエジェラ(パエリア専用の浅く広い鍋)または直径30cm以上の浅く広いフライパン
- ブイヨン用の鍋
- ソフリット用の小さめのフライパン
- 木べら
- キッチンペーパー
- スペアリブ取り置き用の皿
調理手順
チキンブイヨンをとる(事前に準備しておくとよい): 鍋に水1リットル、鶏ガラ(または骨つきもも肉)、ポロねぎ、人参、ローリエ、黒胡椒を入れて強火にかける。沸騰したらアクをとり、弱火にして蓋をし、30~40分煮出す。ざるで濾し、余分な脂を除いて温かいままにしておく。塩で味を調える。
ソフリットをつくる(こちらも事前準備可): 小さめのフライパンにオリーブオイル大さじ4を熱し、ニンニクと玉ねぎを透き通るまで炒める。ピーマンを加えてさらに5分炒め、トマト、パプリカ大さじ1、刻んだローズマリーを加える。中火~弱火で、ときどき混ぜながら15~20分、水分が飛んでペースト状に濃縮され、表面がつやつやになるまで炒め煮にする。これがパエリアの味の土台となる。
スペアリブを焼きつける: スペアリブの水けをキッチンペーパーでよく拭き、塩・胡椒をふる。パエジェラにオリーブオイルをたっぷり入れて強火で熱し、スペアリブの表面全体にこんがりと焼き色をつける。中まで火を通さなくてよい。よい色がついたら、いったん皿に取り出す。
味のベースをつくる: パエジェラに残った油の量をみて、多すぎれば少し除く。弱火に落とし、そこへソフリットを加えて、肉の旨みが溶け込んだ油とよく混ぜ合わせる。焼きつけたスペアリブも戻し入れ、全体をひと混ぜする。
米を炒めてコーティングする(日本米の重要ポイント): 火を中火に上げ、米250gを全体にパラパラとふり入れる。木べらで絶えず混ぜながら1~2分、米の粒が透き通り、表面がパールのように光り始めるまで炒める。この工程で米の表面に油とソフリットの膜ができ、デンプンが過剰に溶け出すのを防ぎ、パラリとした食感に仕上がる。
ブイヨンとサフランを加える: 熱いチキンブイヨン600mlを一気に注ぎ入れる。サフランはあらかじめアルミホイルに包んで数秒火にあぶるか、指で揉んで香りを立たせてから加える。塩で味をととのえ、ここから先は米を絶対に混ぜない。スペアリブを表面に均等に配置し、最初の5分は強火、その後火を中弱火に落として計18~20分、米がブイヨンを吸ってちょうどよい固さになるまで炊き上げる。
ソカラット(鍋底のお焦げ)と休ませ: 炊き上がりの3~4分前に、火を最大にして1~2分加熱する。耳をすませると、「グツグツ」という煮える音が「パチパチ」という乾いた音に変わる。これがソカラットの合図。火を止め、清潔な布巾かアルミホイルをかけて5分間蒸らす。余熱で米が最後の水分を吸収し、味が落ち着く。
仕上げと盛り付け: 仕上げにローズマリーの小枝をのせ、くし形に切ったレモンを添える。パエジェラごと食卓へ。各自がレモンを搾ると、脂のこってり感が爽やかに引き締まる。パンは添えず、この一皿でスペインの味を存分に楽しむ。
盛り付けと相性の良い食べ方
メイン料理として: 前菜のガスパチョや魚のエスカベチェのあとに供するのが定番の流れです。
レモンの効果: レモンを搾るだけで、豚の脂とサフランの風味が軽やかになる。
飲み物との相性: スペインの若い赤ワイン(ティント・ホベン)か、冷やしたロゼがよく合う。アルコールを控えるなら、ミントを浮かべた自家製レモネードが相性抜群。
保存: 残ったパエリアは冷蔵庫で保存し、翌日フライパンに少量の水をふって温め直すと、また違った美味しさがある。
地域によるバリエーション
バレンシア風パエリア(パエリア・バレンシアナ): 鶏肉、ウサギ肉、カタツムリ、いんげん豆、ガロフォ(白いんげん)を使った、もっとも伝統的なパエリア。
シーフードパエリア(パエリア・デ・マリスコ): エビ、ムール貝、イカなど魚介類をふんだんに使った海のパエリア。トマトは入れず、サフランと魚介の出汁で色づけする。
ミックスパエリア(パエリア・ミクスタ): 肉と魚介の両方を盛り込んだ、観光地でよく見る人気のバリエーション。
豚スペアリブのパエリア(パエリア・デ・コスティージャ): 内陸部の家庭料理。骨付き豚肉の脂と出汁が米に深くしみ込み、ローズマリーとパプリカの香りが食欲をそそる、本レシピの系統。
実用的なアドバイス
【教室での段取り】授業では、ブイヨンとソフリットを事前に準備しておく。生徒たちは、スペアリブの焼きつけ、米の炒め、炊き上げ、ソカラットづくりという技術の核心部分だけに集中できる。
【スペアリブの大きさ】3~4cm幅がベスト。大きすぎると米と同時に火が通らない。もし大きいものしか手に入らなければ、あらかじめブイヨンで軽く下茹でしておくとよい。
【米の炒めが運命を分ける】日本米でパエリアをつくるなら、この工程は絶対に省かないこと。表面のデンプンを固めることで、米がべちゃつかず、一粒一粒が立つ。
【サフランの扱い】サフランは熱で香りが飛びやすい。必ず火を止めたあと、または注いだ熱いブイヨンの中で香りを開かせるように使う。量はごくわずか(0.2g)で十分。
【ソカラットのコツ】音の変化を頼りに。焦がしすぎると苦くなるので、「パチパチ」が聞こえたらすぐに火から下ろす。蒸らしの時間は絶対に短縮しないこと。
【ローズマリー】生のローズマリーがなければ乾燥でもよいが、香りの立ち方が異なる。できれば生を使うことをおすすめする。
【パプリカは焦がさない】ソフリットに加えるときも、パエジェラで炒めるときも、パプリカは高温で一瞬で苦くなる。火加減に細心の注意を。
【鍋のサイズ】直径30cm以上が必須。米が重ならず、均等に火が通る。パエジェラがない場合は、浅くて広いフライパンで代用できる。

ホセ
スペイン・ガリシア出身の料理人。20年以上日本で本格スペイン料理を教えています。 このレシピを試してみたい方は、ぜひ料理教室でお会いしましょう!
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