トッシーノ・デ・シエロ(天国のベーコン)

トッシーノ・デ・シエロ(天国のベーコン)

「トッシーノ・デ・シエロ」、直訳すると「天国のベーコン」という不思議な名前を持つこのデザートは、スペイン南部アンダルシア地方の至宝です。その名前とは裏腹に、材料は卵黄、砂糖、水だけ。豚肉は一切使いません。プリンやフランと似ていますが、卵白を一切使わず、高濃度のシロップと卵黄だけで作られるため、信じられないほど濃厚で、絹のように滑らかな口溶けが特徴です。その黄金色の輝きと凝縮された甘さは、まさに天国的な美味しさです。.

調理時間: PT25M
難易度: 中級
4〜6人分
地域: アンダルシア(ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ)

歴史的・文化的背景

このデザートの起源は、14世紀のアンダルシア地方、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラの修道院にあります。当時、この地域ではシェリー酒の生産が盛んで、ワインの清澄(不純物を取り除く工程)のために大量の卵白が使われていました。その結果、大量の卵黄が余ってしまいました。

廃棄するにはあまりにもったいないと考えたヘレスの修道女たちが、この余った卵黄を有効活用するために考案したのが、トッシーノ・デ・シエロです。名前の「トッシーノ(ベーコン)」は、その見た目が豚の脂身(ベーコン)のように黄金色で艶やかだったことから、「シエロ(天国)」は修道院、つまり神聖な場所で作られたことに由来すると言われています。まさに、ワイン造りの副産物から生まれた、創意工夫の傑作です。

材料(4〜6人分

  • 【プリン生地】
  • 卵黄: 5個分
  • 砂糖: 200g
  • 水: 100ml
  • 【カラメル】
  • 砂糖: 50g
  • 水: 大さじ1

必要な調理器具

  • 小さな型(複数)または一つの大きな型(フラン型など)
  • 小鍋
  • ボウル
  • こし器(シノワや目の細かいザル)
  • オーブン用の深い天板(湯煎用)

調理手順

1

カラメル作り: 小鍋にカラメル用の砂糖50gと水を入れ、中火にかける。鍋を揺すりながら、全体が美しい琥珀色になるまで加熱する。火から下ろし、手早く型に流し込み、底全体に広げる。火傷に注意してください。

2

シロップ作り: 同じ鍋(一度洗う)で、プリン生地用の砂糖200gと水100mlを火にかける。沸騰したら、そのまま5分間煮詰めて少しとろみのあるシロップを作る。火から下ろし、人肌程度(約40-50℃)まで冷ましておく。

3

生地を混ぜる: ボウルに卵黄を入れ、泡立てないようにホイッパーやフォークで静かに溶きほぐす。均一になったら、一度こし器でこしてカラザなどを取り除く。

4

シロップと合わせる: こした卵黄に、冷ましておいたシロップを細い糸のように少しずつ、絶えず混ぜながら加える。この工程はゆっくりと行うのが重要です。

5

型に流し込み、焼く: 出来上がった生地を、もう一度こしながらカラメルを入れた型に静かに流し込む。オーブンを160℃に予熱する。天板に型を置き、型の半分くらいの高さまでお湯を注いで湯煎焼きにする。オーブンで20~25分、中央に竹串を刺して液体がついてこなくなるまで焼く。

6

冷やして休ませる: オーブンから取り出し、湯煎から外して粗熱を取る。完全に冷めたら、冷蔵庫で最低4時間、できれば一晩しっかりと冷やす。この工程で味がなじみ、食感が引き締まります。

盛り付けとマリアージュ

型から取り出す際は、ナイフで縁を一周させ、皿をかぶせてひっくり返します。

非常に濃厚で甘いデザートなので、少量でも満足感があります。エスプレッソや、甘さ控えめのホイップクリームを少し添えるのがおすすめです。

その起源に敬意を表して、甘口のシェリー酒(ペドロ・ヒメネスなど)と一緒に楽しむのも、最高の組み合わせです。

地域によるバリエーション

アストゥリアス風: 北部アストゥリアス地方にも同様のデザートがあり、より大きな型で作られることが多いです。

柑橘の香り: シロップを作る際に、レモンやオレンジの皮を一片加えて香りを移し、仕上げに取り出すバリエーションもあります。

水の代わりに: 水の代わりに、同量の甘口シェリー酒やマスカットワインでシロップを作る、大人向けの豪華なバージョンも存在します。

実用的なアドバイス

泡立てないこと: 卵黄を混ぜる際、絶対に泡立てないでください。泡立つと、焼いた時に「す」が入り、滑らかな食感が損なわれます。

シロップの温度: 卵黄にシロップを加える際、シロップが熱すぎると卵黄が固まってしまいます。必ず人肌程度まで冷ましてください。

二度こすこと: 卵黄を一度こし、シロップと合わせた後にもう一度こすことで、究極に滑らかな舌触りが保証されます。これはプロのテクニックです。

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